青井タイル店

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読んだ本のメモ:ちゃんと最近のファンタジーを読む 多崎礼『レーエンデ国物語』

 妄想の中でファンタジー世界を構築したり、なろう原作コミカライズでファンタジーを楽しんだりしているものの、実際のところ伝説とカフェラテを除けば、ファンタジー小説を最近とんと読んでいない。特に非ライトノベルレーベルの国内ファンタジーだと本当にしばらく読んでいない。中学の図書室で借りた空色勾玉とかだろうか。

読んだ本のメモ:疲れ果てたこころは温かなカフェしか見えない トラヴィス・バルドリー『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』 - 青井タイル店

 というわけで最近よく本屋で見かけてたレーエンデ国物語を読んでみることにした。

 はじめに断っておくと、私はフィクション内の繊細な心理描写を楽しむ能力が、たぶんあまりない。

 

 まずAmazonの商品ページに載っているあらすじ

異なる世界、聖イジョルニ帝国フェデル城。
家に縛られてきた貴族の娘・ユリアは、英雄の父と旅に出る。
呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタンだった。

空を舞う泡虫、乳白色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。
その数々に魅了されたユリアは、
はじめての友達、はじめての仕事、はじめての恋を経て、
やがてレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていく。

 あらすじとしてフィーチャーされているのはユリアだけれど、話の大まかな縦の線としては、ユリアの父がレーエンデと地元を結ぶ交易路を通すことにある。本書は大まかに、ユリア個人の葛藤や成長を描くパートと、ユリアの父と寡黙な射手(本編ではツッコミ役のような立ち回りを一任されているため、めちゃくちゃ喋る。むしろ作中で一番饒舌に喋る。)トリスタンが交易路を作るために頑張るパートで構成されていると言えるだろう。

 レーエンデ国物語は全五巻シリーズとなり、本書はその第一作にあたる。そういうこともあってか、レーエンデが概ねどういう地域で、ファンタジー要素としてはどんなものがあるのか、と説明するこにリソースが割かれている。

 主人公の話が大きく動いたり、レーエンデの設定が話に関わってくるのが最終盤に寄せられている。面白いかどうかを判断するにあたっては、続編を読む必要があるな、というのが正直なところ。天冥の標で喩えるなら、メニー・メニー・シープからパンデミックと革命要素を抜いて、フェロシアンたちがいきなり出てくるような趣がある。

 ファンタジーの設定としても、現時点ではそこまでノレるものはない。私はかっこいいものが素直に好きで、かっこいいものをドンと出されれば手を叩いではしゃぐ。そういう嬉しさは本書にはなかった。

 ここまで書いたことだけを読むと、ものすごく否定しているように思えるかもしれないけれど、とはいえ続きを読んだら凄く面白いのだろうという信頼感は不思議と湧いた。たぶん続きを読むと凄く面白いと思うので、続きを読もうと思います。