2023オブザイヤー
2023年の振り返りとして、いろいろなよかったものを列挙する
よかったゲームオブザイヤー
新作部門:ARMORED CORE Ⅵ
言わずと知れたアーマードコアの新作。
インフォグラフィックっぽいものが飛び交うミッションブリーフィングなどアーマードコアっぽい要素がふんだんに散りばめられており、アーマードコアっぽいものが欲しいなと思っている身体の滋養になる。デカく、技があり、倒した時にスローモーションになるなど、ボスのサービス精神が手厚い。ヒロインぽいものもいるし、主人公を褒めてくれる魅力的なキャラクターたちも多い。「なんだかんだフロムは成長(???)したよな」と、キャッチーさを徹底的に廃した尖ったバンドがメジャーデビュー後にきちんとクリスマスソングをリリースしたような、そういう一抹の寂しさと誇らしさが同居する、不思議な気持ちになった。いや、グッドウィルハンティングのラストのベン・アフレックみたいな顔になっている。
「え!?????ティアキンも今年なの!!!????と」書いていて気がつく。
すごい年だ………ティアキンも面白かったです。
バルダーズ・ゲート3も今の所大変面白い。今年は面白いゲームにたくさん触れることができて、よかった。
リメイク部門:バテン・カイトス
私の口は、もはや喜びしか発しない。重ねるべき言葉は、ここにない。
よかったフィクション本オブザイヤー
萌え小説部門:百鬼夜行シリーズ
俺が読んだのは2023年だったから……。思ったより萌えキャラが多い。30代になったからこそ思うのか、30代男性たちが仲良くわちゃわちゃしていることの気高さ、尊さというものが実に沁みる。
川端康成の『片腕』とか、ちょっと退廃的な美学の本だとかを読んで暗黒微笑を浮かべる暗い青春を送った身としては、実家のような安心感を覚える。
長編部門:ペストの夜
まずアマゾンのあらすじをそのまま引用します
オスマン帝国末期の1901年。東地中海に浮かぶミンゲル島では、ペスト流行の噂が囁かれていた。ペスト禍を抑え込むため皇帝アブデュルハミト二世の命で派遣された疫学者は、何者かの手によって惨殺される。代わりに送り込まれたヌーリー医師と、その妻、アブデュルハミト二世の姪にあたるパーキーゼ姫は、ペスト撲滅のために島に降り立つ。だが二人は秘密裡に、疫学者殺害の謎を解き明かす使命も負っていた――。 トルコ初のノーベル文学賞作家、オルハン・パムクが、架空の島を舞台に人間と疫病との苛烈な闘いを克明に描く傑作歴史長篇、ついに開幕!
面白そう!!実際面白いです。
「公衆衛生」への取り組みによって「近代」が発生してしまう、というお話でもあります。公衆衛生と近代と地中海の東側が好きな人は読もう!
短編集部門:暗い庭: 聖人と亡霊、魔物と盗賊の物語
スペイン・ゴス・短編集。読むと全身がゴスになる、表紙もかっこいい。
窓際にいつもいる盲目の老婆だとか、高位の聖職者の死体だとかが出てくる。
カッコ良すぎる本きちゃった………
— アオタイ (@aoitile) 2023年7月2日
国書刊行会さん、かっこいい本をありがとうございます…… pic.twitter.com/RZdEnUFxZs
短編部門:鏖戦
ルビの一つ一つがかっこいい。「何度生まれ変わっても惹かれ合う二人」というロマンチックな筋と、異種の知的生命体との終わらない宇宙戦争を紐付け、「歴史の終わり」を語る作品。どういうこと?と思うかもしれないけれど、読めばわかる。
おまえたち、どうしてそんなにも惹かれあっているんだ
特別賞:小説集 Twitter終了
笑った。なんで商業化しちゃったんだろうね。僕も寄稿しています。諸兄らはもう読んだかな?読もう。
よかったノンフィクション本オブザイヤー
歴史部門:綿の帝国
Amazon.co.jp: 綿の帝国――グローバル資本主義はいかに生まれたか : スヴェン・ベッカート, 鬼澤 忍, 佐藤 絵里: 本
「綿」の歴史を通して奴隷制、植民地主義、強制労働…と、グローバル経済の成立過程を描いたとてつもない労作。「暴力と強制は資本主義の例外ではなく核心」というのがコアメッセージになりそうな勢いで、人々が暴力と強制によって『綿の帝国』と呼ぶべきグローバル経済に回収されていく様が、600Pくらい続く。
世界史をぐるっと包括的に捉えやすくなるんじゃないでしょうか。
これの後に岩波の『ハイチ革命の世界史 奴隷たちがきりひらいた近代』のような、新書の類に触れると ああこれ綿の帝国でやってたやつだな、といった結びつきが生まれて心地よい
ビジネス部門:データマネジメント知識体系ガイド 第二版
いわゆるDMBOK。家にあると心強い。これを個人で所有する意味がどこまであるかは考えなくて良い。こういうのは本棚にあるのが大事なので。
美術部門:増補カラー版 九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史
高校生の頃はこういう本ばかり読んでいました。実家に帰ったような心地がします。
九相図ってなんのために描かれていたの?どう受容されてたの?というところを掘り下げてくれる本。正直九相図は「スカッと要素のある美人画の亜種」としてしか認識していなかったので、大変学びになりました
エッセイ部門:酒の話・抱樽酒話
中国文学者、青木正児による食のエッセイ
河豚や蟹、塩辛など、主に酒の肴について中国古典の碩学がどしどしと語ってくれる。ああアレを食べたい、こう食べたい、といった欲がページをめくるたびに湧いてくる。来年は上海蟹をやりたいものだ。
よかった漫画オブザイヤー
WEB漫画:胎界主
この世で一番いい漫画です。
読切:遠い日の陽
ガチのいい漫画
https://comic-days.com/episode/14079602755391426482
連載:ダンジョン飯
胎界主Wiki初代管理人であることで有名な九井諒子先生の、言わずと知れた名作。完結おめでとうございます。ここ数日1巻から読み直しては最後まで読み、また最初から読み直すということを繰り返している。短編集時代から顕著だった「こんな種族がいる社会って、こうなるよね」というシミュレーションの面白さと、「よくあるRPG」のフォーマットと、「飯」というキャッチーさが結実した、奇跡のような作品。ライオスは本当にいいキャラクターをしている。あえて明言すると、全てのキャラクターがマジで可愛い。
https://www.amazon.co.jp/dp/4047301531?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_VRFX0V2X7AH3VD2SJ0SM
エロ漫画部門:出会って4光年で合体
ド迫力のエロ漫画。語ろうとすると、「いやでもSFとして超面白くて〜」という、オタク趣味の言い訳をするオタク少年のような口ぶりになってしまう。でもマジで面白い大作です。
特別賞:女甲冑騎士さんとぼく
今年から連載が始まりました、注目作です。オタクと甲冑騎士が千駄ヶ谷で暮らす、異色のアーバンファンタジーかつ、様々な形の愛を描いた、素晴らしいコメディ漫画です。よろしくお願いいたします。
https://comic-ogyaaa.com/episode/4855956445048963659
よかったアニメオブザイヤー
吸血鬼すぐ死ぬ(2期)
本当にいいと思います。俺にはこういうものが必要なんだ。
よかった社会派ポルノアニメオブザイヤー
お兄ちゃんはおしまい
根が真面目なので「こんなものが許されていいのだろうか?」と眉を顰めてしまうところも多々あったが、圧倒的に素晴らしい作画や、もの凄い脚本などに打ちのめされる。『鉄鍋のジャン!』の大谷日堂みたいな顔で「こんなもので、こんなもので」と咽びながら、繰り返し繰り返し視聴し続けていた。個人的な好みで言えば、兄と妹で閉じていた序盤の空気が好きです。(ただし、まひろが同世代?の人々との交流を行うのは、まひろの物語として必然だとも思う。また、賑やかな空気があってこそ序盤の暗さが映える側面も否定できない。いずれにせよ、この作品はポルノアニメの一つの臨界点として、青井タイル史に永遠に記憶されることだろう。)
よかった長編アニメオブザイヤー
ゲゲゲの謎
水木がすごい。窓際のトットちゃんと迷いました。
スタッフロールと同時に「あれ」が始まった際、感動のあまり声が出るかと思った。
よかった映画オブザイヤー
マッコールさん(デンゼル・ワシントン)が本当に恐ろしい。
よかったアルバムオブザイヤー
喜哀 OMSB
「志人も参加しているしな」と同窓会に行くつもりで聴いたら、『Blood』にすごくやられた。アルバムを何周もするもよし、曲を単発で聴くもよし。いいアルバムです。
よかったソングオブザイヤー
The Circle Game パフィー・セイント・メリー
Twitter終了を実家に献本したところ、母から
"映画のいちご白書のテーマ曲 サークルゲームを和訳付きで聴いてみてください。君達の事です"
というLINEが飛んできたのが、あまりにも良かったため。
よかったLIVE映像オブザイヤー
Pinhas & Sons feat. Daniel Zamir, Nitzan Bar - Shir Hashomer
Pinhas & Sons feat. Daniel Zamir, Nitzan Bar - Shir Hashomer - YouTube
6:40くらいからのギター激うまマンとソプラノサックス激うまマンの暴れぶりが本当にすごい
今年の初めの方はPinhas and Sons (נחס ובניו)を中心に、イスラエルのジャズをよく聴いていた。現在の情勢には、胸を痛めるとともに憤るばかり。
よかった萌え萌え・ソングオブザイヤー
きゅうくらりん いよわ
今年はやたらとパロディイラストを目にしたなと思い、年末に聴いたらぶったまげた曲。
褒めようと思えばいくらでも褒め言葉が浮かぶけれど、NewJeansおじさんの亜種になりそうなのでやめます。
DDLCのサヨリchangを想起せずにはいられない。そうなるとボカロソングを自殺を想起させる歌として解釈する中学生の心を取り戻しまう。どうすればいいんだ
よかったポルノ・アニメ・ソングオブザイヤー
アイデン貞貞メルトダウン
主人公のペニスの有無についてひたすら歌い続ける最低な曲。強烈な引力があり、激務の際俺は毎日陽が昇る前にこれを聴きながら近所を散歩していた。P丸様。のお声が実に可愛い
よかった買い物オブザイヤー
アラジンのトースター。温め直したカレーパンがカリカリなんだ。
https://aladdin-aic.com/product/toaster2
よかったご飯オブザイヤー(国内)
文芸のオタクたちと『Amets』で食べた、子豚の丸焼き。
子豚の皮はパリパリ。中はしっとり。Netfilixのバーベキュー番組で審査員がやたら「クリスピー」「モイスチャー」といった表現を使う理由がわかったような気がする。
よかったご飯オブザイヤー(国内:よそ行き)
大珍楼で食べた、潮州料理。華美さはないものの、大変美味しい。大満足。
大珍楼で潮州料理をいただきました。
— アオタイ (@aoitile) 2023年6月25日
感動しきりの3時間でした。
海鮮の扱いが抜群で、日本人の好みにも大変合うものなんじゃないでしょうか pic.twitter.com/aULuBEooJy
よかったご飯オブザイヤー(国外)
フランクフルト駅で食べた、メット
豚の生のひき肉を使った、日本においては理論上存在し得ないパン。
ツイートにもある通り、塩味は大変強い。生臭さのないネギトロといったような滑らかさがあり、なかなか美味しい。
「許されるなら生の豚肉を食べてみたい」
— アオタイ (@aoitile) 2023年12月10日
そんな憧れを叶えることができました。
豚のひき肉を生のまま使った憧れのバーガー、「メット」こと、Mettbrötchenです。
臭みゼロのネギトロといった趣きで美味しいです!!
塩が強いので酒が進みます。ドイツ旅行にビールの携帯は必須のようですね pic.twitter.com/FjO4Fv2nFu
よかったご飯オブザイヤー(国外:よそ行き)
TURK Fatih Tutak
「せっかくだし海外のミシュラン行こうぜ!!」ということで、トルコ旅行の際に立ち寄ったイスタンブールのレストラン。とっぱじめに最も評価の高いお店の一つに行ったことで、彼の国における美食の基本ルールを大まかに捉えることができたよかった。つまり、脂肪分の多さは、尊ばれるべきである。
よかった旅先オブザイヤー
ドイツ。
フランクフルト空港を中心に、ケルン、トリア、ヴュルツブルク、ローテンブルク、ニュルンベルクをうろちょろし、クリスマスマーケットを堪能しました。寒いところで飲む酒は美味しい!!
その辺の教会に入るだけでマジで美しいものを見ることができる。母方の実家が寺じゃなかったら改宗していたかもしれない。
あ゛〜〜〜〜〜
— アオタイ (@aoitile) 2023年12月11日
全身がゴスになる pic.twitter.com/gsib3aJJ7L
道路や鉄道についてはバリアフリーの概念がほぼなさそうだったので、周遊するならなるべく若く健康なうちに行った方がいいなと思いました。
よかった食べ物オブザイヤー
ひよこ豆のカレー
自分のためだけに料理をする際のレパートリー。トマトと豆の旨みで、大変幸せな気持ちになる。
よかった珍味オブザイヤー
冬籠り前の脂身は、香り高くて美味しい
ヒグマとツキノワグマの食べ比べに行った際、前菜として出たものだったけれど、その日一番感激したのがアナグマでした。(熊も美味しかったけどね)
普段は人との付き合い以外では肉を食べないのだけれど、「肉は『ありがたみ』を通して周囲の人間との絆や自身の霊的な強度を高める、宗教的な食である」「珍しい獣、調理法を用いた肉は、儀式としての機能が高い、」「野の獣を食べるのは、家畜を食べることより倫理的である」という感覚がなぜか自分の中にある。今年はよく野の獣を食べた。私はより他者との結びつきを強め、霊的に強大な存在に近付いたであろう。
よかった拾い物オブザイヤー
実家で拾ったBIALETTIのエスプレッソマシン
これで淹れたエスプレッソと豆乳でラテを作ると、グンバツに美味しい。
少年時代家族で京都旅行に行った際、父が買ったイノダのデミタスカップも同時に引き取ったので、いい感じのコーヒータイムを味わえている。
よかったことオブザイヤー
女甲冑騎士さんとぼく連載開始!!!
総括
よく食べ、よく読み、よく遊び、よく働いた。よく生きたと言えるだろう。