注意:この記事でには、薬屋のひとりごとのアニメ最新話(2025年3月29日時点)のネタバレと、ペニスへの言及が含まれている。
以前こんな記事を書いた。
宦官とされているヒーロー・壬氏様のペニスがご健在であることを、主人公の猫猫がどのような経緯で知るのか——。それについてアニメでしか『薬屋のひとりごと』を追っていない私が予想をつらつらと書き連ねたのが、この記事だった。
あれから二週ほどが経ち、ついに壬氏様のペニスの真実が猫猫に明かされた。
結論から言うと、私は愚かだった。
まず、壬氏様は高貴な男なので、予想通りびしょびしょになった。ここまでは良い。しかし、びしょびしょになったこととペニスの開示は、直接結びついていなかった。私には、「高貴で美しい男がびしょびしょになる」ことそのものを寿ぐ姿勢が欠けていた。
また、壬氏様が皇帝の弟であることも、今回改めて明言された。ただしそれは、今回の事件の背景説明と今後の展開のためのものであり、ペニス情報の開示とは無関係だった。
私の根本的なミスは、壬氏様のペニスと身分の開示を、セットで扱ってしまったことだ。私は、「ノーブリス・ペニス・シナリオ」——すなわち、ペニスと高貴な身分の両方を同時に猫猫に開示するパターンを前提に、シリアスな予想を立てていた。
しかし冷静に考えれば、うま味のある展開にするには二段階で明かした方がいい。
「尊い身分の人間である」という事実へのリアクションと、「ペニスがご健在である」という事実へのリアクションは、同時にやってしまうには惜しすぎる。
「ノーブリス・ペニス・シナリオ」では、話が政局に寄ってしまう。ペニスそのものに焦点を当てることができないのだ。壬氏様のペニスをスルーするなんて、素人のすることだ。俺は愚かだった。
この点、『薬屋のひとりごと』本編の描き方は見事だった。
まずは、壬氏様と猫猫の極めてプライベートな出来事として、ペニスの存在を描ききる。これは物事を誠実に描こうとするなら当然のアプローチだ。
視聴者は、壬氏様(第二EDで半裸になり、第三OPでびしょびしょになる)の一挙手一投足、そして猫猫を前にした表情の変化、そのすべてに期待している。だからこそ、ペニスが明かされた瞬間のリアクションをたっぷり描く。それ以外の選択肢はない。
ラッキースケベ(※猫猫にとってはまったくラッキーではない)展開の中で、壬氏様の反応やサイズ感について、ギリギリの綱渡りをしながらもコミカルに描ききる。そのうえで一気に“マジ”な空気を持ってくる。あの手腕は見事というほかない。視聴者たちの期待に完璧な形で応えたと言えるだろう。猫猫にとってはラッキーじゃなくても、私は嬉しいからね。
また、ペニスをカエルに喩えたのは純粋に面白い。確かに、サイズ感や感触のうまい喩えになる。猫猫の言う通り粘液も出る。私はペニスのことを真剣に考えてきたつもりだけれど、人生で一度もペニスをカエルに喩えたことがなかった。ペニスへの向き合いについても、上を行かれたような思いだ。
ちなみにこのカエルについて、第三OPでずっと描かれていたことに視聴後気が付いた。私は衝撃を受けた。壬氏様のペニスははじめから私たちのすぐ側にいたのだ。どこか遠くばかりを眺めるばかりで、足元をおろそかにしていた。ペニスは常に脚と脚の間にしかないというのに。壬氏様のカエルは、令和の青い鳥と言える。
最後に、「壬氏様は皇帝の弟である」という情報の開示についても触れておきたい。
察しの良い視聴者にはこれまでも示唆されていたが、今回改めて明言されたことに野暮ったさはなかった。不慣れな視聴者への親切としても機能していたし、すでに気づいている視聴者には「ここから政局と絡む展開になるぞ」という明確なシグナルとして響いただろう。
猫猫は、保身という極めて常識的な欲求から、壬氏の真実に蓋をした。しかし今後は、外の世界がそれを許さない。そんな緊張感がピリリと走る。この作品、本当に次の展開への助走がうまいんだよなあ。
